
経営の基本方針
当社グループは、仮設機材等の提供を通じて質の高いサービスを広くお客様に提供し、事業を通じた社会貢献を果たすことを目指しております。また、常にお客様のニーズにお応えするために新商品の開発及びサービスの向上に努め、新しい価値を提供し続けることにより、当社グループのさらなる発展を図ってまいります。社会、株主、そして従業員に対して信頼と期待に応え、事業の永続的な企業価値向上を目指してまいります。
社会課題の解決に向けた取り組みを加速し、
業界をリードする「プラットフォーム企業」へ
私がタカミヤの代表取締役社長に就任して23年、会長を兼務するようになってから8年が経過しました。この間、タカミヤグループの経営において常に大切にしてきたのは、社会課題を私たちの経営・事業としっかりとリンクさせ、課題解決に寄与する独自のソリューションを創出していくということでした。同時に、当社独自の価値創造プロセスを通じて、社会価値と経済価値の最大化を図り、グループの持続的な成長を追求していくことも果たすべき責務だと考えてきました。建設・仮設業界は今、激動の時代を迎えていますが、私の経営に対する考え方に変わりはありません。経済産業の構造変化が進行する中、業界全体の生産性向上とコストダウンの取り組みをリードし、建設業と足場ビジネスの可能性を広げていくこと、そして時代の変化に敏感な若い社員や、この業界を志望する学生たちに私たちが手がけるビジネスの魅力を伝え、活躍する場を提供していくことがタカミヤとそれを率いる私の使命だと考えています。
タカミヤは1969年の会社設立以来、仮設機材のレンタルというビジネスモデルのもとで着実な成長を遂げてきました。2013年には後に業界のデファクトスタンダードとなる次世代足場「Iqシステム」を市場投入、2023年には市場と業界を刷新する革新的なビジネスモデル「Takamiya Platform」(以下、タカミヤプラットフォーム)の運営を開始しています。業容の拡大に伴い、社員それぞれに活躍の場を用意し、一人ひとりが仕事の中に自身の未来を描けるよう支援することがマネジメントの大切な役割だと考えています。
もちろん、一定規模の企業グループに成長した以上、すべてを私一人でコントロールすることはできません。実効性のあるガバナンス体制を構築するとともに、グループ経営の中枢を担うマネジメント人材を育成・登用し、共通の価値観と課題認識のもとで誠実な企業活動を行っていくことが大切です。タカミヤが目指すのは、「社会から必要とされる企業」そして「お客様や業界を志望する若い世代から選ばれる企業」であり続けること。挑戦を重んじ、変革を志向する創業以来のDNAを堅持しながら、すべてのグループ社員とともに、企業価値向上の取り組みに邁進していきます。
前例のない構造的危機の中、
私たちはあえて「変革」と「挑戦」を選ぶ
私たちは今、これまでとは次元の異なる不確実性に直面しています。タカミヤが軸足を置く建設業界では、かつてない速度で労働力不足が進行し、資材価格の高騰や大型プロジェクトの長期化・停滞が企業体力を奪い続けています。さらに、地政学的リスクの高まりやサプライチェーンの分断といった外的要因が加わり、従来の労働集約型のビジネスモデルでは、社会基盤の構築という建設・仮設業本来の使命を果たせない未踏のフェーズが到来しつつあります。
タカミヤも業界が抱える困難と無縁ではありません。当社グループが手がける仮設機材レンタル・販売事業は、国家プロジェクトの遅延による資機材の滞留、不十分な価格転嫁がもたらす事業資金の逼迫、さらに急激な人件費の上昇という「三重苦」に見舞われ、困難な事業運営を余儀なくされてきました。2024年3月期に終了した「2021中期経営計画」と2025年3月期の連結業績は、当初目標から大幅に下振れしました。企業評価の基本指標である株価やPBR(株価純資産倍率)も昨今、不本意な水準で推移しています。私たちは、見通しの甘さを厳しく受け止めつつ、現状打開の方策を見出していかなければなりません。
これまで経験したことのない構造的な危機の中で、私たちはあえて「変革」と「挑戦」の道を選びます。先行き不透明な変化の時代は、企業が次世代のビジネスモデルを構築し、新たな市場を切り拓いていくためのチャンスの時代でもあります。人材、資金、技術、知見など全社のリソースを結集して、タカミヤのありたい姿=将来ビジョンを具現化していきます。その原動力こそ、タカミヤが独自開発した足場ビジネスの新たな仕組み、すなわちタカミヤプラットフォームです。
業界変革の起点+事業成長基盤としての
タカミヤプラットフォーム
タカミヤプラットフォームは、業界を「あるべき姿」に導きます。建設業界に属する企業の経営資源の最適化、従来のビジネススキームからの脱却はもちろん、収益や効率をもたらします。これまで仮設業界では、営業担当者が誠意を見せるために何時間も、時には丸一日かけて建設会社の現場に足を運び、打ち合わせや商談を行うことが普通でした。義理人情を重んじる属人的な業務スタイルは時として、合理的な判断を失わせます。顧客へ過剰な対応を続けるあまり、業務フローは複雑になり、アナログ業務の弊害である非効率も生まれます。建設業界の生産性がなかなか改善しなかった背景には、こうした慣例が存在していました。一方、Web経由で製品・サービスが動くタカミヤプラットフォームは、数値と論理に基づく選択可能なサービスであり、そこに不合理で非効率な作為が入り込む余地はありません。タカミヤプラットフォームがもたらす効果は、顧客メリットを最大化するだけでなく、社員の考え方と業務スタイルを変える意識改革・行動改革であり、事業のスキームや体制を変革する「構造改革」そのものです。
タカミヤプラットフォームの提案にあたり、私たちはその有用性を具体的なデータを用いてご説明するよう努めてきました。この革新的なプラットフォームの真価は、お客様の成長過程を数値化・可視化できる点にあります。私たちが「タカミヤプラットフォームの成長方程式」と呼ぶこの可視化プロセスでは、1アカウント当たりの売上、損益分岐点、収益化フェーズへの移行時期などが具体的な数字をもって示されます。プラットフォームに対する業界の認知度は次第に高まり、参加企業も順調に増加しています。中心となるサービス「OPE-MANE(オペマネ)」の2025年3月末時点におけるアカウント数は114社となっており、アカウント数・取引量ともに右肩上がりの拡大基調をたどっています。
参加企業の増加に伴い、プラットフォームの稼働データも順調に蓄積され、建設事業の効率性・収益性に与える効果もしっかりと数値化できるようになりました。以前は「1+1=2」という誰もが簡単に理解できる形で、本プラットフォームの有用性を訴求していましたが、実績とデータが揃ってきた現在では、将来的に「1+1=2」以上の収益貢献も可能になることを確信を持ってお話しできるようになっています。
タカミヤプラットフォームは当社自身にもポジティブな影響をもたらしました。プラットフォームの事業拡大が進む中、これまでどおりの生産性では、継続した発展は不可能です。ITインフラとデータを駆使することの重要性が社員の間に浸透し、企業文化として定着しつつあります。抽象的な言葉で将来ビジョンや夢を語るだけでは、社員の意識を変革し、理念と目標の共有化を図ることはできません。感覚に頼らない「デジタルを駆使する組織」への転換が進み、Salesforce※1やRPA※2、サイネージなどを活用したリアルタイムのデータ分析、データ共有が社内標準になってきました。また、独自に開発したシステムと連携させることで、受発注や製品提供などの顧客対応において大幅な工数削減を実現しています。従来のビジネスモデルの延長線上にプラットフォームの実現はありません。思考の転換が、この事業の成功の必要な条件ではないかと考えています。
※1 Salesforce(セールスフォース):クラウドベースの顧客関係管理ソフトウェア
※2 RPA(Robotic Process Automation):ソフトウェアロボットによる定型業務の自動化
持続可能な産業構造の確立に向けて
次世代ビジネスモデルの構築に挑む
タカミヤプラットフォームはいまだ発展途上です。利便性の高いサービス体系ではあるものの、単なるフレームワークではなく、建設業界と経済社会の基盤を支えるサステナブルな“知的インフラ”であり、その根底を支えるのがDXだと理解しています。当社グループはこのプラットフォームを業界の慣習と事業構造を変革する新たな取り組みとして、そしてタカミヤの持続的成長を牽引するドライバーとして大切に育てていきます。
2024年9月には、プラットフォームのソリューションを体感できる施設として、「Takamiya Lab. West」内に「Innovation Hub(イノベーションハブ)」をオープンさせました。将来的には、プラットフォームを同業他社にも開放し、建設業界の共通インフラとして進化させていく構想も持っています。当社グループは、タカミヤプラットフォームを基軸にビジネスモデルの変革とポートフォリオの最適化に挑戦し、提供する社会価値・経済価値の極大化を目指していく方針です。
タカミヤプラットフォームの拡充以外にも、企業価値の最大化に向けて取り組むべき経営テーマは少なくありません。足場の個体管理を可能にするQR認証・履歴トラッキング、不稼働資材のリサイクルと電炉材使用率の拡大、安全強度データの開示と可視化サービスの提供、DXによる足場取引の標準化と生産性向上、事業活動における環境負荷の低減など、速やかな対応が求められる課題が山積しています。タカミヤは社内に蓄積した技術とノウハウを駆使して、建設・足場ビジネスの安全性と効率性を高める取り組みを牽引し、持続可能な産業構造を確立してまいります。
ステークホルダーの視点を大切にしながら
資本コストと株価を意識した経営を実践
タカミヤは、お客様、株主の皆様、取引先、グループ社員、地域社会など、様々なステークホルダーのお力添えをいただきながら着実に成長を遂げてきました。プラットフォームビジネスを成功に導き、収益構造の変革を完遂するためにも、ステークホルダーの皆様のご理解とご支援が欠かせません。こうした認識に基づき、当社ではステークホルダーの皆様との対話の深化と、コミュニケーションの緊密化に力を注いでいます。タカミヤプラットフォームの成長性・再現性を、定量データと実証事例を用いて丁寧にご説明することで、資本市場における適正な評価につなげてまいります。皆様からいただいたご指摘・ご提言を貴重な経営情報として、今後の事業活動に反映させていきたいと考えています。
経営と事業の円滑化を図るうえで大切なのは、ステークホルダーの皆様と価値観を共有し、会社の将来をともに考えていくことです。プラットフォームの進化と、数値に基づく業務運営を実現するには、デジタルネイティブ世代の発想と行動力が不可欠であり、当社はその活躍を戦略上の基軸と捉えています。課題も解も現場にある、私は社長就任以来、その信念を持ち続けてきました。今後も外部の方々だけでなく、社内の各部署・各部門で職務の遂行に全力を傾注している人たちの声に謙虚に耳を傾け、力を合わせてタカミヤの未来を切り拓いていきたいと思います。
マネジメントが描く成長ストーリーと、その果実をステークホルダーの皆様と分かち合う、付加価値分配のシナリオを投資家やアナリストを中心とした市場関係者にお伝えすることも大切な取り組みだと認識しています。タカミヤが成長力にあふれた会社であること、成長を担保する経営資源を豊富に保有していることをご理解いただくことによって、旧来の価値基準による企業評価を更新できるのではないでしょうか。業績予想の下方修正や中計目標の未達など、ネガティブなニュースばかりが注目される現状ですが、それは市場の責任ではなく、適切なIR活動を行ってこなかった当社自身の問題だと厳粛に受け止めています。適切な情報発信と日常的なコミュニケーションを通じて、高収益体質を確立するための不断の経営努力が続いている事実を知っていただくことが重要だと感じています。
「資本コストと株価を意識した経営」のもと
キャッシュアロケーションの最適化に注力
「資本コストと株価を意識した経営」の実践も重要な経営テーマの一つです。タカミヤはこれまで、効率的な資本利用とキャッシュアロケーションの最適化に努めてきました。しかし、近年の業績低迷もあって、当社の取り組みとその成果は資本市場で正しく評価されていません。株価は低水準にとどまり、PBRは1.0倍前後で推移しています。当社の企業実態と成長可能性に見合った市場評価を獲得するためには、株主還元の充実、ROEやROICを意識した戦略的な成長投資の実行に加え、ウェブサイト、決算説明会、統合報告書など様々なチャネルを活用したIR活動により、当社の成長可能性や戦略・施策の有効性を訴求し、市場関係者の理解と共感を喚起していくことが大切です。中期経営計画の進捗説明はもちろん、成長ドライバーごとのKPIの開示を強化し、四半期単位のROIC推移と資本効率説明の標準化を進めてまいります。健全な財務規律のもとで、ROICと資本コストのギャップ是正に向けた資本配分、PBR改善に向けたポートフォリオの再編を行い、タカミヤプラットフォームをはじめとした成長領域に資金を集中し、その進捗を迅速かつ正確に発信することによって、市場と社会における当社の評価をさらに高めていきます。
資本政策および配当政策に関しては、従来どおり、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定的かつ継続的な配当を実施することを利益配分の基本方針としています。また、配当の絶対額を増やすこと以上に、将来を見据えた実効性のある投資活動を推進することで継続的な利益成長を実現し、企業価値を高めていくことが株主をはじめステークホルダーの皆様のご期待に応える最善の方法だと理解しています。これからも、業容の拡大と収益力の強化に向けた取り組みを加速し、業界のリーディングカンパニーとしての地位をより盤石なものとしていきます。
互いの個性を尊重し、
意見を交わせる自由闊達な組織風土を醸成する
タカミヤはポートフォリオの再編を通じて、足場を中心とした仮設機材のサプライヤーから、DXにより建設・仮設業界の事業構造と経営体質を変革するIT企業へと変貌を遂げました。IT企業の強みは、売上が一定水準を超えると、その多くが利益として計上されるという、高収益のビジネスモデルにあります。フロー型事業の枠組みに縛られ、タカミヤプラットフォームを基軸とするストック型ビジネス、社会課題解決型ビジネスになじめない社員が残っていることは否定できない事実です。組織風土の改革を継続し、社員に対してプラットフォーム主導型のビジネスモデルが持つ優位性を深く理解するよう促していくことも、私たちマネジメントの務めだと言えるでしょう。
現代を生きる企業にとって、数字で考え、ファクトに基づいて発言する企業文化の醸成は、他社との差別化を図り、厳しい競合に打ち勝つための基礎条件です。旧世代の人間は感覚に基づいて思考しがちですし、事業計画や投資事案を審議する重要な会議においても、過去の経験に導かれた抽象的な意見が多くなる傾向が顕著です。私たちは情報の大切さを身体で理解しているデジタルネイティブ世代に学ばなければなりません。過去の成功体験や長年の慣習にとらわれない若手社員の自由な発想をもっと大事にすべきでしょう。また、彼らの個性や発想を押しつぶすことのないよう、誰もが自由に考え発言できる開かれた組織風土と良好な職場環境をつくることも重要な取り組みだと感じています。
先に申し上げたとおり、建設・仮設業界に属する各社は、激変する事業環境の中で厳しい舵取りを余儀なくされています。国家レベルの巨大プロジェクトや大型案件の工事が遅滞しても、遅延料を請求できるわけではありませんし、人件費や材料費の上昇分をお客様に転嫁することはほぼ不可能です。現在もタカミヤの売上・収益の多くを占める既存事業のビジネスモデルはもはや限界を迎えつつあります。こうした時代だからこそ、社員の自由で柔軟な発想やステークホルダーの視点に立った客観性ある提言をポートフォリオ改革のプロセスに織り込み、時代環境の変化を先取りする新たな収益モデルへと昇華さえていくことが大切だと考えています。
グループ社員の総力を結集して
「中期経営計画2024-2026」を完遂する
2024年4月に始動した「中期経営計画2024-2026」は現在、2年目の取り組みを推進中です。本中計では、プラットフォームビジネスの拡充を筆頭に、海外・アグリ事業の強化、人的資本やDXへの積極投資、ROIC経営の徹底などを重点施策に掲げ、経営ビジョンで謳った「業界初の足場プラットフォーム企業」への飛躍を目指しています。連結の定量目標は2025年5月に見直しを行い、売上高527億円、営業利益30億円、営業利益率5.7%、ROE(自己資本利益率)6%、ROIC(投下資本利益率)3%に再設定しました。
中計の初年度であった2025年3月期は、大型プロジェクトの着工遅延などを受けて売上高は微減、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも大幅な減益となりました。今後も先行き不透明な事業環境が継続するものと思われますが、私たちは経営ビジョンの実現に向けて、変革と挑戦を続けていきます。そして、基盤構築のフェーズを経て、プラットフォームのデファクトスタンダード化をより確かなものとしていきます。
環境と産業社会のサステナビリティに
貢献する企業グループの創造を目指して
タカミヤは「環境に配慮したオペレーション」「製品の持続的な安全性と品質」「コーポレート・ガバナンスの高度化」などの8項目を持続的に成長するためのマテリアリティに設定し、各項目についてリスクと機会を明確化したうえで、短期から長期の多様な取り組みを展開しています。私たちの使命は、地球環境と調和した事業活動を通じて、様々な社会課題に対応する先進的なソリューションを創出し、日本と世界の産業発展に貢献することです。また、独自の価値創造プロセスを基盤に、人々の豊かな暮らしに寄与する新しい価値を創出・提供するとともに、私たちが属する建設・仮設業界における事業構造改革をリードしていくことも重要な任務だと捉えています。
建設・仮設は社会インフラの構築と整備を担う公共性の高い産業であり、そこで働く人たちの日々の努力が現代社会の豊かさと快適さを支えています。資本市場において企業のESG(環境・社会・ガバナンス)活動が重要な評価基準とされる今、自然環境と経済社会、そして企業自身のサステナビリティを追求することは、すべての企業にとって最優先で取り組むべき経営命題だと言えるでしょう。私たちタカミヤグループは、これまでに蓄積した技術と独創のプラットフォームを競争力と差別化の源泉として、変革と挑戦を積み重ね、持続可能な社会の形成に貢献してまいります。変化の最前線に立ち、既存の常識や慣習に挑み続ける――それがタカミヤらしさの核心であり、私たちが実現しようとしている「未来」です。
ステークホルダーの皆様には引き続き、当社に対するご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2025年12月
代表取締役会長 兼 社長
髙宮 一雅