
経営戦略本部との役割分担と、
中期経営計画で注力する課題・領域について
私は経営管理本部長として、人事、総務、経理、安全管理の4部門を管掌しています。一般に、経営戦略本部が「攻め」、経営管理本部が「守り」とされることがありますが、実際の経営はそれほど単純ではありません。成長戦略を実効あるものにするには、守りの強さが必要であり、また守りを強くするためにも、将来を見据えた攻めの視点が欠かせません。その意味で、経営戦略本部と当本部は明確に役割を分担しつつも、常に相互補完的に連携する関係にあります。私たちの役割は、「中期経営計画2024-2026」を支える人的基盤、財務基盤、統制基盤を整え、成長投資を持続可能な形で支えていくことにあります。
中期経営計画において、当本部が特に注力しているのは、第一に「自律的な組織文化」の醸成、第二に300億円規模の成長投資を支える財務規律の確立です。人的資本の面では、社員一人ひとりが自ら考え、行動し、キャリアを切り拓く「自走する社員」を増やしていくことが重要です。財務面では、プラットフォーム事業成長に向けた各種の投資を、自己資本と負債のバランスを踏まえながら適切に実行しなければなりません。経営戦略本部とは、投資優先順位、KPI管理、資金需要の見通し、人材配置、情報開示の各局面で密に連携し、攻めの戦略を守りの仕組みで確実に支える体制を築いています。
2025年3月期の成果と課題について
2025年3月期を振り返ると、経営管理本部としては、将来の成長を支える土台づくりを前進させることができた一年だったと認識しています。人的資本関連では、「人材が企業力の本質である」という考え方のもと、若手育成、職種横断の分科会、知見共有の仕組みづくり、職種コース変更制度などを通じて、自律的な組織文化の醸成を進めました。特に若手層に対しては、事業計画立案や経営陣へのプレゼン機会を設けることで、受け身ではなく主体的に価値創造に関わる風土づくりに取り組んでいます。こうした施策は即効性よりも継続性が重要ですが、社員の行動変容という点では確かな手応えが出始めています。
教育・研修体制については、今後さらに強化すべき課題も明確です。管理職研修やDX研修などの仕組みは整いつつありますが、今後は「制度がある」だけでなく、「現場で成果に結びつく」状態に高めていく必要があります。また、ダイバーシティの面では、2025年3月末時点で女性および外国人の管理職比率は2.4%、女性・外国人の係長比率は13.3%であり、裾野は広がりつつあるものの、管理職・役員層の多様性はなお発展途上です。障がい者雇用率も2.15%と法定雇用率2.3%を下回っており、採用と定着の両面から改善を進める必要があります。タカミヤらしい人材ポートフォリオとは、同質性に依存した集団ではなく、現場力と変革力を併せ持つ多様な人材が補完し合う構成であると考えています。
働き方改革と職場環境の面では、2025年3月期より新卒初任給の改定を実施し、フレックスタイム制の導入、オフィス改革の推進を進めました。オフィスを単なる執務空間ではなく、「憩いの場・癒しの場」、そしてコミュニケーションのプラットフォームと捉え直している点は、当社らしい特徴だと考えています。多様な働き方を制度として整えるだけでなく、社員が心理的安全性を持って対話し、挑戦し、学び合える職場環境にしていくことが、人的資本の価値を高めるうえで不可欠です。
財務・経営基盤の面では、2025年3月期末の総資産は750億76百万円、純資産は225億83百万円、自己資本比率は29.2%となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは棚卸資産増加等により5億85百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産取得や子会社株式取得などにより45億42百万円の支出となり、成長投資の負担がバランスシートに明確に表れています。こうした中で当本部として重視しているのは、投資の継続と財務健全性の両立です。調達手段については、借入中心の間接金融に加え、アセットファイナンスやエクイティファイナンスなどの活用可能性を視野に入れ、調達手段の多様化を進めています。また、金利上昇局面への備えとして、有利子負債の固定・変動比率を概ね均等に保つ方針をとっています。
また、タカミヤプラットフォームの拡大に伴い、資産の質や構成も変化しています。従来の販売起点の資産構成から、賃貸資産、Base、Lab、DX基盤といった、継続的な利用収益を生み出す資産へのシフトが進んでいます。これは単に資産が増えるという話ではなく、B/Sの中身を「回収可能性」と「資本効率」の観点から見直していくということです。今後は、営業利益率だけでなく投下資本回転率も意識し、ROIC改善につながる資産構成へと変えていく必要があります。株主還元については、累進配当の考え方を継続しながら、内部留保は財務基盤の強化と成長投資に充て、結果としてEPS、ROIC、PBRの向上につなげていきます。
2026年3月期の取り組みの方向性について
2026年3月期は、人的資本と財務基盤の双方で「質を高める」ことに重点を置きます。人的資本では、自律的な組織文化の定着をさらに進めるとともに、教育研修を現場成果に直結させる運用に深化させます。若手登用、管理職育成、DXリテラシー向上、多様な人材の活躍支援を一体で進め、制度と現場運用のギャップを埋めていきます。財務面では、300億円規模の投資計画を前提に、調達構成、金利リスク、自己資本の厚み、資産回転を統合的にマネジメントし、成長投資と健全性の最適バランスを追求していきます。経営管理本部としては、攻めの戦略を「実行できる会社」にするための土台を、より強固なものにしていく考えです。
ステークホルダーへのメッセージ
タカミヤグループに期待していただきたいのは、成長戦略の華やかさだけではなく、それを支える経営基盤の強さです。人材、安全、財務、ガバナンスといった一見すると地道な領域こそが、企業価値を持続的に高める源泉だと私は考えています。だからこそ私たちは、社是・経営理念である「愛」を企業活動の根底に据え、社員、お客様、協力会社、株主・投資家、地域社会との信頼関係を丁寧に積み重ねていきます。今後も、社内外の多様な声を経営に生かし、共創による企業価値向上を実現していきたいと考えています。
2025年12月
取締役 執行役員 経営管理本部長
辰見 知哉