TAKAMIYA ACTION

経営の基本方針

当社グループは、仮設機材等の提供を通じて質の高いサービスを広くお客様に提供し、事業を通じた社会貢献を果たすことを目指しております。また、常にお客様のニーズにお応えするために新商品の開発及びサービスの向上に努め、新しい価値を提供し続けることにより、当社グループのさらなる発展を図ってまいります。社会、株主、そして従業員に対して信頼と期待に応え、事業の永続的な企業価値向上を目指してまいります。

前中期経営計画の振り返り
トランスフォームの進捗に経営資源を集中

  

 タカミヤは2024年3月期をもって「2021中期経営計画」の3年間の取り組みを終了しました。本中計では、建設業界に独自の価値を提供するプラットフォーム企業に進化することを目指し、「Iqシステム」を中心としたハードとソフトの融合したサービスの開発に注力いたしました。
 タカミヤは1969年の創業以来、足場を中心とした多彩な仮設機材を安定供給しつつ、着実な成長を継続しています。しかし、仮設機材のビジネスは競合との差別化が図りにくい上、短中期の景気変動に左右されやすいという構造的な問題を抱えています。また建設業界にもIT化の波が押し寄せ、旧来の事業を堅守するだけでは次の成長が望めない状況になってきました。そうした情勢のなか、タカミヤは2019年に創業50年の節目の年を迎えました。時代の変化に即して事業構造・収益構造の変革を図ることが、持続的な成長を追求するための最優先課題となってきました。
 2021年5月に公表した「2021中期経営計画」では、自社の業態特性と事業環境の変化を踏まえ、長年培ってきた知見とノウハウを駆使してビジネスパートナーの諸課題に最適なソリューションを提供し、仮設ビジネスのあり方を一新するプラットフォーム企業を目指す企業ビジョンを打ち出しました。以来3年、タカミヤはプラットフォームを担う人材の育成、AIなどのデジタル技術を活用した業務・事業の効率化、ソリューションの中核となるソフトウェアの開発など、さまざまな取り組みを進めています。また、建設業の魅力を高め、人材の確保を円滑化するため、働き方改革の推進に力を注ぐと同時に、社員の意識変革を通じて自律性を持った人材が前向きに業務に取り組む「自走集団」の形成に努めてきました。
 中計の最終年度であった2024年3月期、売上高や営業利益などの計数目標は未達となりましたが、プラットフォーム企業へのトランスフォーム(変革・転換)は順調に進展し、さらなる成長に向けた基盤整備は、ほぼ達成できたものと自認しています。

ストックビジネスへの転換を牽引する、独自のプラットフォームビジネス

 ここでは私たちが標榜するタカミヤTakamiya Platform(以下タカミヤプラットフォーム)について、そのコンセプトと具体的な取り組みをご紹介しましょう。タカミヤはこれまで建設業界に高品質の仮設機材、すなわちハードを提供しつつ業容を拡大してきました。また卓越した技術力と豊かな知見をもとにハードの進化を図ってきました。その到達地点が作業性と安全性に優れた階高1,900ミリの次世代足場「Iqシステム」です。また高度な金属加工技術や足場関連技術を横展開するかたちで、住宅用機材や農業用ハウス、高層ビルの耐震補強に使用する構造機材など、さまざまな製品・サービスを開発し、製品ラインナップの多角化を図ってきました。
 しかしハードに依存する事業モデルは、前述した通り、不毛な価格競争に巻き込まれやすく、外部環境の影響を受けやすいという弱点を持っています。機材ビジネスの未来を拓くために私たちに何かできるのか。収益力の向上を図るために何をすべきか。そうした模索のなかで見出したのがタカミヤプラットフォームという独自の価値創造基盤です。
 タカミヤプラットフォームでは、「Iqシステム」を代表とする最新鋭のハードに、DXを活用したデジタルサービス、すなわちソフトを融合することで、建設業が抱えるさまざまな課題にトータルなソリューションを提案・提供することを目指しています。タカミヤのプラットフォームを活用することで、お客さまは、スタッフの長時間労働や業務・作業の非効率性による人手不足などの諸問題を解消できるだけでなく、事業の領域を拡げ、事業規模を拡大することが可能になり、ひいては収益性を改善することができます。
 タカミヤプラットフォームはまた、タカミヤの事業構造を変革し、建設・仮設業界に新たな価値を提案する取り組みでもあります。これまでの賃貸資産を中心としたポートフォリオから、プラットフォームインフラを基軸とする新たなポートフォリオへと、事業構造・収益構造の高度化を図っていく。それは、ボラティリティが大きいフロービジネスから、安定的な収益が期待できるストックビジネスへと移行することを意味します。
 タカミヤは2023年3月期を「プラットフォーム元年」と位置づけ、2024年3月期においては、タカミヤプラットフォームの市場浸透をめざすさまざまな取り組みを展開しました。PCやスマートフォンなどのデジタルデバイスからプラットフォームへのアクセスを可能にするポータル「OPERA(オペラ)」や、足場の管理委託サービス「OPE-MANE(オペマネ)」や、足場の購入・売却を自由に行うことができるデジタルマーケット「Iq-Bid(アイキュービッド)」などの革新的なサービスを開始しました。2024年3月期のプラットフォーム関連の売上高は、27億円に達しています。また2024年9月には、兵庫県尼崎市に立地する「Takamiya Lab. West」内に、建設課題のソリューションを探求する「Innovation Hub」が竣工し、グランドオープンしました。今後は「Takamiya Lab. West」を研究開発の中核拠点として、タカミヤプラットフォームの機能拡充とユーザー数の増大に取り組んでいく方針です。タカミヤプラットフォームが遠くない将来、建設ビジネス、仮設ビジネスの「世界標準」となることは間違いないと言えるでしょう。

中期経営計画2024-2026
業界初の「足場プラットフォーム企業」へ

 前中計の成果と課題を踏まえ、2024年5月に公表したのが、2027年3月期までの3年間を対象とする「中期経営計画2024-2026」です。本中期経営計画では、「タカミヤプラットフォームとDXで新たな価値を創造し、業界初の足場プラットフォーム企業へ」という経営ビジョンのもと、プラットフォームの拡大を目的とした実効性ある将来投資を実行するとともに、海外およびアグリ事業の基盤強化と資本コストを意識した経営の実現を目指しています。
 具体的には、タカミヤプラットフォームのメインサービスである「OPE-MANE」の利用者拡大を図ると同時に、お客さまの利便性向上を視野に、好立地へのBase(機材管理物流拠点)の開設を加速していきます。また預かり資産(仮設機材)の管理を透明化することにより、お客さまの安全・安心を確保し、同時に当社オペレーションの生産性を高めていきます。さらに、お客さまにご納得いただけるサービスを提供し、その対価を適正価格として受領するという適切な価格政策を推進することにより、建設業界ならびに仮設業界の近代化と質的進化に貢献していきます。
 業容拡大のエンジンであるグローバル展開については、フィリピン、韓国、ベトナムなど新興諸国の市場深耕に努め、当該国・地域の増大する需要を確実に収益化していく方針です。将来の収益の柱として期待しているアグリ事業に関しては、アグリベンチャー、大学、農機メーカーなどの外部パートナーと連携しつつ、TAKAMIYA AGURIBUSINESS PARK(タカミヤアグリビジネスパーク)における先端農業の取り組みを加速、その成果を広く社会に発信することにより、当社ならびに参画企業のブランド強化と関連製品の周知拡販を図っていきます。
 中計3年間の投資については、サービス提供の基盤である賃貸資産に172億円、Takamiya Lab.とBaseの整備・拡充に146億円、付加価値創造の源泉であるDXと人的資本の強化に39億円、合わせて357億円の新規投資を実行する計画です。
 定量面では、中計の最終年度である2027年3月期に営業利益61億円、営業利益率10.0%、ROE 10%以上、ROIC 4.3%以上、累計「OPE MANE」アカウント数 500社以上、3か年「OPE MANE」契約受注高 140億円以上を達成することを目標として掲げました。なお、タカミヤの方向性や戦略を株主・投資家をはじめステークホルダーの方々により正確に理解していただくため、2025年3月期より報告セグメントを変更し、従来の販売事業、レンタル事業、海外事業に加えて「プラットフォーム事業」を新規設定しています。

「DX」をキーワードに、次代を担う人材の育成に注力

 タカミヤの最大の資産であり、成長の原動力である人材の育成・強化は、当社が永続的に発展するためにとくに注力すべき最重要課題のひとつです。「2021中期経営計画」の期間中も人的資本の拡充に向けたさまざまな取り組みを実行しました。社員のモチベーションを高めるためにインセンティブの導入やオフィスの改革を実施するとともに、DXによる業務の効率化を通じて生産性の向上を図りました。また社員に対してタカミヤの将来ビジョンや事業戦略を分かりやすく発信することにより、当事者意識の喚起と経営情報の共有化を進めました。
 こうした取り組みの結果、タカミヤのビジョン/戦略に対する社員の認識が深まり、それは生産性の向上や社員の働き甲斐いう成果に結実しています。引き続き、人的基盤の強化に努めていく方針ですが、今後の人材強化策においては、もはや「生産性」という言葉は不要かもしれません。社員一人ひとりがDXの意義と目的をしっかりと理解し、ITを基盤とする新たなサービスを開発と業務の合理化・省人化を進めていけば、会社全体の生産性は必然的に向上するからです。お客さまの諸課題、現代社会の諸課題に対して最善のソリューションを案出し、それをDX化して提案することで、業容の拡大と収益力の強化というふたつの目標を達成できると考えています。
 人的資本の充実を図る取り組みは、タカミヤの企業文化を革新するという「副次的効果」を生んでいます。タカミヤは長らく、トップダウン型の指揮系統のもと、迅速な意思決定と施策実行に努めてきました。しかし企業が健全な発展を続けていくためには、お客さま、株主さま、社員など多様なステークホルダーの期待や利益を考慮したバランスの取れた経営判断が不可欠です。ガバナンスにおいても、トップマネジメントのリーダーシップ以上に、社外取締役の意見を取り入れつつ、経営の透明性と戦略・施策の実効性を高める工夫が必要です。若手社員、女性社員の活躍支援やDX人材の養成など、人的基盤を拡充する取り組みのなかで、社員をはじめとしたステークホルダーの意見や提言をくみ上げ、経営に活かしていく開かれた企業風土が醸成されてきました。ビジョンや価値観の共有化が進み、マネジメントから若手社員まで、グループの総力を結集して新たな領域に挑戦する自由闊達な文化が培われつつあることに確かな手応えを感じています。

建設業界の旧弊と特殊性を変革し、2024年問題を解決に導くために

 人材不足や長時間労働などの諸課題が「2024年問題」として顕在化しつつある建設業界の課題に対して、私たちはタカミヤプラットフォームの展開を通じて、当社自身の成長を追求するだけでなく、建設業界の古い体質や慣習といった、いわば業界の特殊性を変革し、建設業界自体の生産性向上に貢献していくことを目指しています。建設業界は義理人情を重んじることで秩序ある成長を実現してきた世界で、AIなどの最先端技術の導入や生産性向上の取り組みについては消極的でした。業界に身を置く人びとの旧弊が改革や改善の試みを妨げてきたと言えるかもしれません。
 しかし、旧来の手法を守るだけで業界や各企業の成長が期待できた幸福な時代はすでに過ぎ去りました。DXを活用した業務の効率化、対面営業からリモートへの転換による生産性の向上、そうした取り組みが業界の今後を大きく左右する時代が到来しており、当社にとっては千載一遇の機会が訪れています。お客様はタカミヤプラットフォームを利用することで、人員体制を縮小し、コストを削減することができますが、それは業界全体の特殊性を打破することにもつながります。またタカミヤが提供する次世代足場と、作業者の安全性を数値化・可視化する取り組みは、建設現場における労働災害の減少にも寄与するでしょう。タカミヤプラットフォームは建設業が抱える様々な課題・問題を一気に解決し、会社間、人間間にWin-Winの共創関係をつくりだす革新的な仕組みだと自負しています。
 タカミヤは1969年の創業以来、仮設機材のレンタルを主要ビジネスとして継続的な成長を達成してきました。建設市場、仮設市場に新たな価値を提供することにより、経済産業の発展と人びとの豊かな暮らしの実現に貢献してきました。事業環境がこの先どれほど変化しようと、私たちの基本姿勢に変わりはありません。引き続き、サービスや製品の開発、物流拠点の整備と拡充、安全の可視化などの取り組みをDXにより促進することで、タカミヤプラットフォームの機能向上に注力し、業界と社会の健全な発展に寄与していきます。また、タカミヤのビジョンや価値創造プロセスを分かりやすくステークホルダーに発信することにより、広く社会から信頼され、期待される企業グループの創造を目指してまいります。

8つのマテリアリティのもと、自然環境と産業社会の持続可能性を追求する

 近年、わが国の企業社会でもSDGsやESGの重要性が正しく認識されるようになり、自然環境や経済社会の持続可能性に対する貢献が、企業が存続していくための必須条件と考えられるようになってきました。タカミヤは企業の社会的責任が強く意識されるようになる以前から、社是である「愛」を経営と事業のすべての領域で具現化するため、安全と環境に配慮した製品・サービスの開発と世界展開に力を注いできました。事業活動を通じて持続可能な社会の構築に寄与するとともに、組織における多様性の尊重や業界の未来を担う人材の育成など、豊かな社会価値を創出すするために経営リソースを積極投入してきました。
 2023年には、当社の事業活動に大きな影響を及ぼすリスクと機会を明確化した上で、8つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。マテリアリティには、温室効果ガスの排出削減に資する次世代足場の開発とBase搬出システムの高度化、部署の壁を越えて社員が助け合う「コイン制度」の運用、社員のモチベーションを高めるダイバーシティ&インクルージョンの取り組み、経営の透明性と健全性を担保するガバナンス/コンプライアンス体制の構築など、さまざまな施策が包含されています。なかでも、国の食糧政策の一角を担う農産物の安定供給と各種農業課題への対応については、農業用AIやロボット収穫機の開発・製造・販売を手掛けるアグリテックベンチャーとの緊密な連携を行うなど、多くの企業と連携を進めることで、日本の農業の発展と新たな可能性の発見に取り組んでいます。
 顧客・株主・取引先・社員はもとより、地域社会や自然環境を包摂した幅広いステークホルダーにタカミヤ独自のソリューションを提供し、人びとが安心・快適に暮らすことのできる未来社会の形成に重要な役割を果たすこと、それがタカミヤの考えるサステナビリティです。

不確実な時代を切り拓く、先進的な企業グループの創造を目指して

 日本と世界の建設業界・仮設業界はいま、歴史的な変革期を迎えています。先進国においてインフラやプラントの補修・更新や建設従事者の高齢化、人手不足による着工の遅れなどが喫緊の社会課題として浮上する一方、アジアを中心とした新興諸国では、インフラの整備やビル建設に伴い、仮設機材に対するニーズが拡大基調を辿っています。タカミヤが軸足を置く国内の建設・仮設市場に眼を向けると、コロナ禍が終息し、建設需要は緩やかに回復していますが、世界的なインフレの進行による資材・エネルギー価格の高騰や、ウクライナ紛争の長期化やイスラエルのガザ侵攻による地政学的リスクの高まりなど懸念材料も多く、事業環境は依然として先行き不透明な状況で推移しています。こうした流動的な情勢のなか、タカミヤが着実な成長を継続していくためには、経済社会の構造変化を先取りしつつ自らを変革し、時代の要請に応える革新的なビジネスモデルを確立していくことが欠かせません。マクロ経済とくに景気変更の影響を受けにくい安定した収益モデルを構築しなければ、タカミヤは一層の発展を図ることも、社会的使命を果たすことも不可能です。こうした環境認識に立脚し、私たちはタカミヤプラットフォームを利益創造の源泉とする先進的な企業グループの確立に邁進していきます。
 タカミヤは現在、「中期経営計画2021」の取り組みを通じて基盤整備が完了したタカミヤプラットフォームの普及拡大を加速する新たなフェーズを迎えています。「中期経営計画2024-2026」で掲げた戦略・施策を一つひとつ確実に遂行することにより、すべてのステークホルダーから認められるバランスの取れた成長を実現し、企業価値の最大化を目指していきます。同時に、タカミヤの企業実態を反映した適正な市場評価(株価とPBR)を獲得するため、株主還元の充実と資本市場との対話の深化にも力を注いでいきます。
 株主様への利益還元については、これまで通り、安定的かつ継続的な配当を実施するとともに、内部留保を活用した有効性ある成長投資を通じてEPSの拡大を図り、株主価値のさらなる向上に努めていきます。市場との対話に関しては、機関投資家やアナリストとのワンオンワンミーティング、個人投資家向け説明会、決算説明会、各種IRメディアの機動的な運用など、さまざまな機会を捉えて、市場関係者とのコミュニケーションを深め、そこで得られた知見や気づきを今後の企業運営に役立てていきたいと考えています。
 タカミヤはこれからも建設・仮設ビジネスの未来を切り拓くため、不断の挑戦を重ねてまいります。ステークホルダーの皆さまには今後とも変わらぬご支援を賜りたく、心よりお願い申し上げます。

 

2024年12月
代表取締役会長 兼 社長
髙宮 一雅